logo

医療滞在ビザに係る身元保証機関 外務省・経済産業省登録管理番号:B-032

日本先端医療ニュース

〈放射線治療はα線の時代へ〉 より患者に負担の少ない療法を追求

2016-02-29 14:43

江戸川病院は東京都江戸川区東小岩にあり、病床数418の地域医療の中心病院である。東京都災害拠点病院や地域医療支援病院、東京都前立腺がん診療連携協力病院などに指定されている。
特長としては、がん治療に力を入れており、その中でも放射線療法が一般病院としては非常に件数が多い。特にトモセラピー(Tomo Therapy)という最新鋭のがん放射線治療装置を3台取り入れ、IMRT(強度変調放射線治療)という技術を使って、がん細胞にピンポイントで当たる放射線治療を行っている。今年、さらに先進的なBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)という中性子線によるがん治療の機械が入る。BNCTでは放射線による被爆もなく、がん細胞のみをたたくので、進行がんへの効果も期待される。トモセラピーもBNCTも副作用の少ない患者の身体へ優しい最先端の治療法である。

患者の入り口から出口までをきちんと診る医療

yoshida_a03

●最新の設備で地域衣料に貢献

―― まず、貴院の特長について、教えていただけますか?

大澤 当院には、外来化学療法センターがあり、専任のがん薬物療法専門医のもと、がんの化学療法や放射線療法が受けられるようになっています。
特長としては、まず、がんの放射線療法が一般病院としては非常に件数が多いということです。今、トモセラピーが3台あり、さらに今年は加速型BNCTシステムといって中性子線の機械が入ります。がん治療の最新設備が整っています。
もう一つの特長は、がんの診断から治療、終末期、さらに在宅まで、一人ひとりの患者の入り口から出口までをきちんと診られる医療をするということです。
また、まずは当院の場合は、夜間診療とかも行っていますので、なるべく就業時間、患者の社会生活を損なわないで外来で治療ができるということでしょうか。だから仕事が終わって、夜間に照射しに来るとか、主婦の方ですと、ちょうどお子様が帰ってきた後に来てもらえます。

――先生ご自身の医療理念のようなものをお伺いできますか?

大澤 私は、もともと東京港区にある東京慈恵医科大学にいました。都心の大学病院ということで患者がたくさん来るのですが、キャパがいっぱいで終末期になればまた患者を以前の病院へ戻すということがあり、患者の最期を診られなくなってしまう。なかには最後に行き場がなくなる人も出る。患者の入り口から出口までを診られないというのが、がん化学療法と緩和医療を専門とする私の中にすごくジレンマとしてありました。
患者を最後まで診ることができるということで当院に来たのです。
それと、江戸川区というのは実は医療過疎地域と考えられます。23区の中でも一番病床数が少ないし、病院数も東京都の平均と比べると少ない。私のなかには、地域医療に貢献したいという気持ちもありました。
また、私は抗がん剤治療も専門なので、抗がん剤の治療に関しては、食道、胃、大腸、肝胆膵、肺、乳腺、前立腺と、ほぼ全部のがん種を扱っています。

●放射線療法について

―― 放射線療法のメリットはなんでしょうか? また、先ほどお話のトモセラピーとBNCTには、それぞれどのような特長がありますか?

大澤 トモセラピーは、基本的にはコンピューターで正常な組織とがん細胞を分けて、できるだけ正常な組織に放射線が当たらないようにすることができる最新鋭の装置ですね。IMRT(強度変調放射線治療)といって、がんの部分のみにピンポイントで放射線を照射できる画期的治療ができるのです。
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)はもっと先進医療になりますね。トモセラピーは放射線治療なので被曝は避けられませんが、基本的にBNCTは中性子を照射するので正常細胞には影響が少ない。
BNCTの治療の仕組みは、まずがん細胞に取り込まれやすいホウ素化合物を投与し、それに向かって中性子を照射、そしてホウ素化合物と中性子がぶつかることによって生じるα線ががん細胞のDNAを叩くのです。つまり、BNCTは、がんを細胞単位で非侵襲的に死滅させることが可能なので、より患者の身体への負担が少ない治療法といえます。体の機能や形態の欠損が少ないので、社会復帰に支障が残らない。放射線治療に比べて効果が2~3倍高く、照射も1日1回ですむ。それらがBNCTの利点です。
今、関東ではがんセンターしかありませんが、関東エリアでは当院が2カ所目になります。

BlockImg-img_path-10742
―― BNCTはどのような患者に向いているのですか? そして、がん治療法の選択はどのようにされていますか?

大澤 一番いいのは骨転移の患者じゃないでしょうか。乳腺ですとか前立腺ですとか、そういう骨転移で痛みが出るような人ですね。あとは臓器でも、転移で臓器が腫れてしまっている人の疼痛緩和という意味合いではいいのかもしれない。
BNCTはレベル的には結構進行している患者に適応します。意味合いとして、難しいですけども、術後の補助療法といって、再発を予防するための治療か、進行していて多臓器に転移をしているかという人と、ちょっとそこは分けなければいけないと思いますけれども、基本的にはステージ4で放射線とか抗がん剤治療を行っている人ですね。
例えば、再発がん、同一臓器に多発の病巣を有するがん、極めて形状の複雑ながん、悪性脳腫瘍、悪性黒色腫、再発頭頸部がん、多発肝がん、肺がんなどです。
基本的には治療法については、チームで診断します。放射線治療の先生や放射線診断の先生ともカンファレンスをして、患者のQOL(生活の質)を考えて最善の治療法を考えます。

●医療ツーリズムで検診を

―― 中国からの患者を、この病院では受け入れていますか? 先生ご自身は中国との医学交流はありますか。
大澤 ありますね。院長は医療ツーリズムを今考えています。当院は、総合健診センターといって、総合ドック、脳ドック、骨ドック、消化器ドック、循環器ドック、レディースドックなどがあり、検診を受けることができます。
中国語については、2016年1月から、中国、上海出身の丁先生が赴任しています。上海医科大学を卒業して、広島大学に医学技術補助員として来て日本語の検定も取り、内科の認定医資格も持っています。
私は2015年に北京に学会で行きました。2016年には上海に行く予定です。

oosawah

『人民日報海外版日本月刊』より転載