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日本先端医療ニュース

〈食道から直腸にいたるまで〉 ほかの病院で治療できない患者を受け入れる

2016-03-02 10:43

東京女子医科大学病院
副院長 消化器病センター長
山本雅一 先生

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東京女子医科大学消化器病センターは、消化器疾患に苦しむ患者のためにつくられた専門施設であり、その診療レベルは世界的に評価されている。
山本先生は、肝・胆・膵外科の専門家であり、肝がん、胆道がん 膵がん治療の名医である。肝がん、胆道がん、膵がんの手術数は日本トップレベル。特に、同センターで考案されたグリソン鞘一括処理による系統的肝切除により飛躍的に肝切除の成績はのび、基本術式として世界に広まっている。
さらに腹腔鏡下肝切除、膵切除も行うなど、肝胆膵疾患では根治性と機能温存とのバランスを常に考慮して、多種多彩な手術を行っている。
また、患者の声を生かすテーラーメード治療を重視し、メスを使わない総合的肝がん治療――ラジオ波焼灼療法(RFA)、経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE)をはじめ、さまざまな治療を行っている。

世界に誇る日本の消化器外科の伝統

●食道から直腸にいたるまで

―― まず、貴院の特徴についてご紹介いただけますか。

山本 病院自体は東京女子医科大学の附属病院として、明治以来の長い歴史がありますが、消化器病センターは1965年に設立されたものです。
食道がんの世界的権威であった故・中山恒明先生がこの施設の創始者で、設立以来ここで非常に多くの手術をされました。
すでに設立から50年の月日が経っており、私は消化器病センター長として7代目に当たります。
センター施設の特徴は、食道に限らず、胃、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、結腸、直腸にいたるまで何でもやっています。
もう一つの特徴は、従来の内科と外科という診療科の壁をなくすことで、消化器疾患に苦しむ患者に最良の医療が提供できるようにつくられた施設だということです。そのことで多くのオリジナルな仕事がなされ、その診療レベルは世界的に評価されています。

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―― 食道から直腸までと広い範囲になりますが、山本先生のご専門は?

山本 私自身は肝胆膵外科の専門家です。特に悪性腫瘍です。肝臓がんとか胆道がん、膵臓がんですね。いわゆる「肝胆膵がん」です。
肝臓の手術に関してですが、「グリソン鞘一括処理」による系統的肝切除という方法で、非常に安全に手術が行われています。専門的になりますから具体的な内容は省略させていただきますが、この方法による手術は基本術式として日本のみならず世界に広まっています。
また10年以上前から腹腔鏡下肝切除も行っています。

●ほかではできないような手術にチャレンジ

山本 当院はハイボリュームセンターであり、非常に数多くの患者が集まります。胆道がん、膵臓がんに関しても、ほかでは手術できないような患者さんが送られてくるところが特徴かなと思います。
胆道外科手術としては内視鏡下低侵襲手術から拡大手術まで、あらゆる胆道疾患に対し治療を行っています。膵疾患も基本手術から臓器温存手術まで多種多彩な手術を行っています。
そして、メスを使わない総合的肝がん治療を目指し、ラジオ波焼灼療法(RFA)、経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE)、インターフェロン療法、抗がん剤治療、放射線治療、がん免疫療法、また良性疾患の胃食道静脈がん治療なども行います。そのことで、患者ひとりひとりの症状や個性にあわせたテーラーメード治療ができるということですね。
それから、当院には生体肝移植で世界的にも有名な江川〔裕人〕教授がいます。5年前に京都大学病院から移籍してこられました。
また、心臓、呼吸器、腎臓などの合併症のある患者に対しては、東京女子医大の総合力による最善の治療ができます。

―― 中国人の患者を受け入れたことはありますか? 病院として外国人の受け入れ態勢はございますか?

山本 中国人の患者はいらしてます。つい最近も、もう末期で手術はできませんでしたが胆管がんの人がお見えになりました。それから、肝臓がんの人が何人かいます。
ただ、中国でそれなりの治療をされていますが、向こうで「もうできない」と言われてから来ていますので……。最初からここでという人は少ないです。
今病院としても外国の方をどう受け入れていくかというのを話し合っているところですね。やはり言葉と費用の問題があります。中国語が話せる専門のスタッフをそろえるまではできておりません。今のところ皆さん通訳を連れて来られています。
患者ないしは患者の家族が来られて、そして外来で診させていただき、そのうえで費用のこともお話ししております。

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●世界の最尖端を行くような病院に

―― 先生ご自身がこの道を選ばれたきっかけは何ですか? これからの先生の夢をお聞かせください。

山本 まずは、人を相手にする仕事のほうが自分に合っていると思いました。父が、私が小学生のときに病気で亡くなったことが影響しているかもしれません。ちょうど医学部に入ったとき、非常に世界的に有名な食道がんの権威中山恒明先生が私の大学に講義にいらして、それじゃ、ここへ来ようと。
これからの夢は、やはり若い人を育てることです。使命ですよね。今、日本では外科医のなり手が本当に少ないのです。明らかに減っています。若い人たちにレベルを上げていただいてこれからの医療を担ってほしい。
消化器外科は特に忙しい分野なので、若い人には少し敬遠されているかなと思います。
また、肝胆膵は手術が難しい臓器です。外科的治療以外に、画像診断、RFA、TACEなどの内科的治療もできる人材の育成が大事です。私は今、日本肝胆膵外科学会の理事をしています。そこでは、高度な技術を要する肝胆膵手術を安全、確実に行い得る外科医を育て、専門医として認定する「高度技能専門医制度」を制定しています。やはり普段やっていることをきちんと伝えて、若い人に育っていってほしいからです。 
今後は東京女子医大病院の将来と高度先進医療の実現をめざして、「新しい病院をつくる」ために働きたいですね。ほかの病院で治療できないような患者を受け入れて治すことです。たとえば中国でできないのだったらこちらでやると。やはり日本の最先端であり世界の最先端を行くような病院でなければいけないと思っています。

『人民日報海外版日本月刊』より転載