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日本先端医療ニュース

〈外国人患者の増加を想定〉 日本最大級の私立総合病院

2016-03-18 11:50

亀田総合病院 呼吸器外科 部長
杉村裕志 先生

千葉県鴨川市にある亀田総合病院は、全34科、病床数約900床の千葉県南部の基幹病院である。風光明媚な鴨川に立地し、日本最大級の私立総合病院として知られる。質の高い医療サービスと充実したアメニティで、救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院、地域難病治療支援事業などほぼ全ての公的医療サービスの指定を受け、急性期医療から在宅医療まで地域に貢献している。
手術数は年間1万件を超え、平均在院日数12日以下の超急性期病院として24時間態勢で医療を提供している。2000年ISO9001の認証を医療機関としては初、2009年日本初の国際医療認証(JCI)取得。
杉村先生は呼吸器外科の中でも、肺がんの治療に経験豊富であり、開胸手術、胸腔鏡手術、内視鏡を使った支援ロボット手術までをこなす。その中で、患者一人ひとりの病状に最適な治療法を選択し、患者に最も安心・満足してもらえることをモットーとしている。

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患者一人ひとりに合わせた最適な手術方法を

●開胸手術からロボット手術まで

―― 先生は肺がん関連の名医と伺っています。貴院の呼吸器外科と手術の特長についてお話いただけますか。

杉村 呼吸器外科では肺がんを中心として各種疾患に対して安全・確実で苦痛の少ない治療を第一に考えて行っています。手術にも今は、いろいろな選択肢があると思うのですね。昔ながらの開胸手術、近年一般的になっている内視鏡カメラを使った胸腔鏡手術、さらにロボットを使った手術など、私も一通り経験がありますが、その患者の病状に合わせた手術法がやっぱり適用されるべきだと思います。
ロボットの手術は、術者は直接患者にタッチせずに、少し離れたコンソールという装置で遠隔操作をします。患者に直接タッチするのはロボットのアームです。通常の胸腔鏡手術だと、まっすぐな機械を身体の穴を通して入れ、梃子のように使って操作することになります。
ロボット手術の利点の1つには、動きが細やかであること。ロボットのアームのまっすぐなものが入って、アームの先に動く多関節がついているのですね。狭い胸の中で自由自在にそれが動くものですから、そのメリットは大きなものがあります。
もう1つは、今出回っているda Vinci(ダヴィンチ)というロボットは、3Dで見られるので、非常に精緻に深さの感覚などがわかりますから、そういう面では非常によいと思います。
ただ、ロボットはまだ発展途上で、胸腔鏡の手術で熟練した術者が行う操作にかなわない面もありますので、今後の発展に期待しているところです。いたずらに、新しいものだから、どんな方にもそれを施すとかというような考え方には相容れない思いがあります。
幸い、当院の呼吸器外科チームは、経験豊富な執刀医が複数いますので、それぞれの経験から導き出される最適な手術方法を、患者一人ひとりに合わせて選択するように心がけています。
例えば、胸腔鏡手術は私の得意分野の1つですけれども、必ずしもすべての方に適用はしません。より複雑な手術操作を要する進んだ肺がんの方には胸腔鏡手術が適さない場合もあります。
それとは逆に、初期の肺がんの方でも、無駄に肺を切除することなく病巣を的確に切り取るためには、胸腔鏡手術では間に合わない面があり得ます。そういう場合は、傷が小さいからといって胸腔鏡手術を勧めるというのではなくて、傷が少し大きくなっても、そのほかの因子で最適な手術方法を判断する。例えば無駄に肺を切り取らないでリンパ節をしっかり取ってくることが大事な場合には、それを重視するというようにフレキシブルに適用するように心がけています。
たしかに胸腔鏡手術は低侵襲で、術後疼痛が少なく、早期退院を可能にしています。ただ、術後数カ月以上経つと、痛みはさほど変わらないという報告も多いのです。ですから、胸腔鏡手術の利点は患者には享受していただきたいですが、それと引き換えに何かデメリットが大きくなるようであれば、少し痛みは強くても開胸手術を適用する場合もあります。
我々の世代は、もう最初から胸腔鏡手術のトレーニングを受けていますので、得意なところですけれども、得意だからそれだけをやるということは決してないですね。

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●「凍結治療法」で肺機能を保全

―― 貴院の呼吸器外科の特長の一つである凍結治療法について教えてください。

杉村 当院の呼吸器外科の特長として、「凍結治療法」があります。小さな2cm以下の肺がんあるいは転移性肺がん等に対して、局所麻酔で針を腫瘍に刺し腫瘍を凍らせて死滅させる治療法です。痛みがほとんどなく肺機能を低下させない非常に侵襲度の低い治療法です。

●人として治療にかかわる

―― 先生ご自身は、中国との医療交流はございますか? また外国人患者の受け入れ状況はいかがですか。

杉村 当院は外国人患者を受け入れており、私も診断を主体として診たことはあります。
私自身は、中国との医療交流は、アメリカとカナダの病院で中国人の患者を受け持ち、中国人のドクターやコメディカルと仕事をしていました。今、当院の呼吸器外科にも1人、中国人の20代の先生がいます。北京生まれの日本育ちで非常に優秀で、中国と日本の良いところを持ち合わせ、楽しく一緒に働いています。
外国の方々にもきめ細かく対応して、ケアの網から零れ落ちないような対応を心がけています。診断もそうですし、治療に関してもそうです。
例えば当院には、若い人からお年寄りまで、また病気が進んだ人から初期の方まで、いろいろな患者がいらっしゃいます。そういった人たちに画一化された治療指針を当てはめるだけでは、足りない面があると私は思っています。
エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を行うとか、国際的なガイドラインに沿って治療を行うとか、そういうことはもちろん前提です。けれども、そのほかの一人ひとりの患者が持つ要素も考え合わせた上で、その方に合った治療、その方が「受けてよかった」と思っていただけるような、きめ細かい対応をしたいと思っています。

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―― 最後に、先生の夢は何ですか?

杉村 私は医師として、自分がかかわった患者が、みんな治って帰っていただくことが究極の夢です。ただ、診断や治療の過程であるとか、場合によっては治療しても治らなくて亡くなってしまう過程においても、人としてかかわることで、嬉しい思いや喜びを感じ取ってもらえることが目標です。

『人民日報海外版日本月刊』より転載