logo

医療滞在ビザに係る身元保証機関 外務省・経済産業省登録管理番号:B-032

日本先端医療ニュース

〈横浜市の中核病院〉 患者の視点に立ったチーム医療を実現

2016-03-18 11:41

済生会横浜市東部病院 副院長
消化器センター長
長島 敦 先生

済生会横浜市東部病院は、救命救急センター・集中治療センターなどを中心として急性期医療、高度専門医療を提供する病院である。疾患別センター制を導入し、一人の患者の治療計画を立てるにあたり内科系と外科系の医師が連携し、最善の治療法を施行している。また、地域支援病院として地域の医療機関と連携し、短期間の入院と医療費の抑制を実現させている。
長島先生がセンター長を務める消化器外科では、大腸がん年間250例、胃がん150例などと全国でも有数な手術症例を誇る。消化器内科とも連携して24時間365日緊急対応が可能である。また医療連携を重視し、「胃大腸がん術後地域連携クリニカルパス」の作成は、がん地域医療のモデルケースとして全国から注目されている。

患者の人生哲学を尊重した手術を

●縮小手術から拡大手術まで

―― 消化器がんの権威として、先生が行われる手術の方針と特長をお聞かせいただけますか。

長島 僕が基本的に一番に考えていることは、患者が僕に手術してもらってよかったなと思ってもらえるような手術をすることです。そのために、手術時間を短くするとか、出血量を少なくするとか、もちろん他でもみんなやっていることですが、僕の場合、あとは、その患者がどういう人生哲学を持っているかということに敬意をもって手術をしようと思っています。
もう少し具体的に言うと、例えばがんの手術をやるときには、がんの手術の教科書というのがある。このがんに対しては、ここからここまでを取りなさいという。しかし、例えば85歳の人にそういうしっかりした手術をすると、ある一定の頻度で必ず合併症が起きる。そのとき、患者がそこまでの手術を希望していない、ここまで治してくれればいいという場合には、それに合わせた範囲を取る手術(縮小手術)をします。
逆に患者が絶対この後50年以上生きなくちゃいけない、たとえ合併症があっても一番長生きできる可能性のある手術をしてくださいというのであれば、そういう拡大手術もやるわけなんですよね。縮小手術から拡大手術まで、その患者の考え方、人生哲学にあわせた手術というのを心がけていますね。

3546.tm

●医療資源を有効にシェアするシステムを

―― 先生が医者になられたきっかけと、今後の目標をお聞かせいただけますか?

長島 僕は、人が人に向き合える仕事がしたかったのですね。30年間を医者としてやってきた今、自分の専門分野だけではなくて、日本の医療全体を良くしたいのです。
今一番考えているのは、高齢者救急の問題ですね。それから次に医療資源をいかに有効にシェアするかということです。厚生労働省が医療連携と機能分担と言っていますが、都会では全然できていません。医療資源の無駄と医療の過剰を改善していかないと、本当に日本の医療は破綻するのではないかと思っているんです。
例えば、当院は地域医療支援病院に指定されており、ここでは横浜市東部地域になりますが、この地域によい医療を提供するために、この地域の診療所および近隣病院の先生方との連携を緊密にし、一人の患者を地域で診るという考え方をしています。無駄な医療を行わないことなどを目標に、地域の先生方に連携していただくわけですが、そのために「地域連携クリニカルパス」を使用しています。
ご承知かもしれませんが「地域連携クリニカルパス」は患者が、急性期~回復期~維持期にわたって切れ目のない治療を受けるための「診療計画表」です。これを中核病院、町の開業医、診療所、介護施設などが「共通言語」とすることで、患者の情報を共有し、その都度転院先に渡していくというシステムです。複数の医療機関の役割分担を含めた効率の良い治療を適正に提供することと、地域完結型医療の実現を目的としています。
当院でも地域のチーム医療の一環として「地域連携クリニカルパス」を使用しており、とくに消化器外科では「胃大腸癌術後地域連携クリニカルパス」を診療所の先生方と作成し運用しています。これはモデルケースとして全国から注目されています。それによって、(無駄がないわけですから)短期間での退院を実現していますし、医療費も抑えられます。
ですから、まず医療を提供する側が、医療資源を有効にシェアするシステムをつくることだと思うんですね。今、機能分担、医療連携を一生懸命やっているところです。

501a9c3b05f7ed7cc1a0efa9b3013d11

―― 中国の患者の受け入れ態勢はいかがですか? 日本の診断技術を信頼して検診を希望する中国人が多いようです。

長島 当院の手術症例は胃がん・大腸がん・食道がんなど、すべての疾患で全国でも有数ですが、手術件数は現在も増加傾向にあり、近隣だけではなく遠方からも多くの患者が来られます。
中国からの患者は、つい最近も手術でいらっしゃいました。その患者は弁護士の方でした。受け入れは、個々の対応になります。システム立ててやる方向はまだできていないのです。ただ、将来的には横浜は地理的にも羽田空港から近いですから、そういうことも病院として考えてもいいですね。
確かに診断技術というのは非常に難しいです。医師個人や病院によっても全然違ったりしますから、検診を受けられるのはいいかもしれませんね。

『人民日報海外版日本月刊』より転載