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日本先端医療ニュース

〈世界最高水準の眼科医療〉日本の高度な医療を国際的に展開

2016-04-25 12:10

国立大学病院長会議常置委員長
千葉大学医学部附属病院 病院長
山本修一 先生

千葉大学病院の歴史は142年前の1874年の開設にさかのぼる。以来、診療や治療方法の研究などで多くの実績を重ね、世界をリードする医療人を輩出してきている。その伝統を引き継ぎ、高度で安全・安心な医療を提供し、信頼を得ている。2014年7月の新棟オープンに続き、2015年7月には外来診療棟がフルオープンした。利便性とともに、患者サポート体制が向上し、快適な受診空間が広がっている。
そして、2014年10月には「国際医療センター」を設置し、海外からの患者さんの受け入れのほか、外国人医師・研究者などの海外交流を進め、同院で開発・実践される医療の海外展開および国際水準の向上を目指している。
山本病院長は、網膜硝子体手術において豊富な経験と高い技量を持ち、手術成績・件数ともに日本のトップクラスである。高齢化とともに急増する眼疾患は、生活の質(QOL)を著しく損なう。世界最高水準の眼科医療を提供し、また安心で最適な治療法を全ての眼疾患に対応できる体制を整えている。

海外の人々の健康・福祉の向上にも貢献する

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●医療の国際展開に対応するセンター

―― 貴院では2014年10月、「国際医療センター」を設置されました。センター設置の目的と特長についてお聞かせ下さい。

山本 医療のグローバル化が進むなかで、当院でも国際展開の一環として、まず、海外からどういう患者さんが来ても対応できるような体制を整えることが必要だったのです。
また、外国人医師・研究者の受け入れや海外への派遣など、海外との交流を進めていき、当院で開発・実施される医療の海外展開および国際水準の向上を目指していきます。
現在、患者さんの受け入れについては政府が作ったMedical Excellence JAPAN (MEJ)からの依頼が多いです。MEJは、日本が国際医療協力の一端を担う事業を官民連携で展開し、日本だけでなく海外の人々の健康・福祉の向上に貢献することを目的に設立された一般社団法人です。

―― 先生は病院長でもあり、全国の国立大学病院長を取りまとめる病院長会議の常置委員長でもあります。国立大学病院の使命をどのようにお考えですか?

山本 第一義的には、日本国民に最高の医療を提供するということだと思います。高齢化が進んでさらに人口が減っていくなかで、あくまでも日本の人たちに高度な最先端の医療を提供することは、確実に担保しなければいけないことです。
次のステップとしては、国際展開です。日本の高度な医療を海外にも提供していくことが必要だと思います。海外から患者さんを受け入れるだけでは富裕層に限られてしまうので、優秀な人材を海外に派遣して、各地域での医療水準を上げていくということが最終的な国際展開の目標になるのではないかと思います。若者にとっても海外展開は魅力的で、推し進めていくべきだと考えています。
また、今は大学病院が個々に国際化のプロジェクトチームを作って、海外からの受け入れあるいは海外への支援を行っている状況で、アウトバウンドに関しても模索しているところです。それを我々がまとめつつ、MEJとどう組んでいくか、ということになるかと思います。
今、MEJに「日本国際総合病院」という構想があり、国立大学病院が、うちだったら何科が海外の患者さんにこういう医療を提供できます、というような手挙げをしているところです。
現在、国際医療センターは42の国立大学病院のうち8つしかありません。まだ海外に、きちんと「日本国際総合病院」を示すまでの展開はできていません。

―― 先生ご自身は中国との医学交流はありますか? そして、中国からの患者を受け入れていますか?

山本 6、7年前から毎年、重慶や瀋陽、そして台湾の高雄にも学会などの講演に呼ばれて行っています。
中国からの患者さんも、もちろん受け入れています。そのための国際医療センターです。
しかし、中国に限らず海外から来られる患者さんを、ただ心配だからと検診に来る人と、日本でないと治療ができない人とに分けて考えなければいけません。今、日本の医療資源は限られていて、基本的にまだ医者不足は解消しておらず、どこの大学病院も患者さんがあふれています。
日本でなければ治せないという患者さんの受け入れは積極的に進めなければいけないと思いますが、国立大学病院が、ただ心配だからと検診にくる人たちに対応している余力が今のところありません。
病気かどうか分からないけど、日本で検診を受けたいという中国や東南アジアの方が多いですね。もちろん、それについては、千葉大学病院、あるいは日本の大学病院への信頼感が厚いと思うので、きちんと対応していく必要があると考えています。例えば、この敷地の中にそういう検診を受け入れる別法人を立ち上げて、千葉大学病院がそこに責任を持つというような検診センターの設立についても、これからの構想として進めていきたいと思っています。

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●患者さんに本当の意味でのホスピタリティを

―― 先生ご自身の専門である眼科の領域で、得意とする治療技術と力を入れていることをお教えください。

山本 高齢化により眼疾患は急増しており、QOL(生活の質)を高く維持するために「目が良く見える」ことがとても重要です。その中で、私の専門は網膜硝子体の手術です。主に網膜剥離、糖尿病網膜症、黄斑円孔・黄斑前膜という黄斑の病気の手術を手がけています。あと加齢黄斑変性という病気の診断と治療です。
網膜の手術に関しては、日本のトップ10、関東ではトップ3に入る治療実績があり、患者さんの目線に立った安心できる治療を心がけています。
もう1つは、難病に指定されている網膜色素変性症の進行を抑える薬の開発臨床試験に携わっています。患者さんは3万、4万人と日本でも結構います。今のところ進行すら止められない難病で、この薬が開発されれば世界初となります。世界中の何十、何百万という人が助かるということですね。

―― 最後に、貴院の、そして先生ご自身の今後の目標をお聞かせいただけますか。

山本 当院の眼科は、診断に関して最新の医療機器を整備しており、全国でもトップレベルです。他の領域もさらに充実させたいと考えています。そして、この病院を設備や規模だけではなく、世界一の病院にしたいと思っています。
そのために必要なのは、患者さんに対する本当の意味でのホスピタリティです。外国からの患者さんが、千葉大学病院の皆さんが、自分のことを考えてケアしてくれることに何より感動したと言ってくれています。それが、治療の安全性や効果を高めることにつながると思います。

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『人民日報海外版日本月刊』より転載