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〈最尖端のアブレーション治療〉患者に負担の少ない腹腔鏡手術の名医

2016-04-18 11:47

横須賀共済病院 病院長
長堀 薫 先生

横須賀共済病院は創立110年を誇る神奈川県三浦半島の基幹病院である。救命救急センターを持ち、がん診療連携拠点病院として地域社会に絶大な信頼がある。高度急性期医療を担う病院として、心臓カテーテル、脳疾患などによる急性期の治療の実績が高い。外科の手術も年間で1500例を超え、神奈川県ではトップクラスである。

診療科の一番の特徴は、不整脈のアブレーション(焼灼)治療で日本のトップクラスである。アブレーション治療は患者さんの体への負担も少なく、効果も期待できる。そして外科では肝胆膵(肝臓・胆のう・膵臓)、大腸、胃を腹腔鏡を用いて積極的に治療している。長堀院長は、肝胆膵の外科の高度技能医を持ち、腹腔鏡手術については学会の技術認定医である。今でも肝臓外科の40%ぐらいは腹腔鏡手術によっている。

今日、医療へのニーズもめまぐるしく変わっているが、横須賀共済病院では地域社会に最高の医療を提供することを創立以来の理念としている。

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地域の患者さんに安心していただけるために

●日本の地域社会と中核病院の機能

―― 貴院の特徴を教えてください。

長堀 当院は創立が明治39年(1906)ですから、110年の歴史があります。神奈川県三浦半島45万人の基幹病院として、救命救急センター、周産期母子医療センターを持ち、がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院の指定を受けています。手術や心臓カテーテルなどいわゆる急性期の治療では年に救急車1万台を受入れ、手術件数も7000例という実績があります。高度急性期医療に特化しているのが特色です。

それともう1つは外科。手術数は年間で1500を超え、神奈川県トップクラスです。外科では今、肝胆膵、大腸、胃の良性疾患やがんを腹腔鏡で積極的に治療しています。それは、私の専門分野です。

大きさだけでしたら中国や韓国のほうは3000床くらの病院が中核としてありますが、日本の場合は、こういう500床から1000床ぐらいの規模で高度な医療を提供できる病院が複数あり、各地域の患者さんに安心していただけるのが特徴になっています。当院も三浦半島、横須賀の基幹として、クオリティの高い医療を提供することで地域になくてはならない病院になっています。

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―― アブレーション治療についてご説明願えますか。

長堀 診療科の特徴として、一番やっているのが循環器科の不整脈に対するカテーテルアブレーション(焼灼)治療ですね。この症例数は日本トップクラスです。

アブレーション治療とは、心房細動など脈のリズムが狂ってしまって脈拍数が多くなる「頻脈性不整脈」という症状に対して行う治療法です。たとえば足の付け根などの太い血管から電極カテーテルを入れて、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を小さく電気焼灼(でんきしょうしゃく)するのです。そのことで不整脈の根本的な治療ができます。

抗不整脈薬では異常な部位そのものを取り去ることはできませんが、アブレーション治療ではカテーテルの先から高周波電流を流して異常な生体組織そのものを小さく焼くのです。

―― 横須賀という地域柄、先ほども駅前でアメリカ人を見かけたんですけども、外国人の患者さんも受け入れているのですか? 

長堀 月に10から15例ぐらい外国人の方がいらっしゃいます。救急が多いですね。おっしゃるように横須賀にはアメリカの海軍施設ありますから月に10例近くが来られています。ベース(基地)の中にも海軍病院がありますが、医師が10人ちょっとしかいないのです。重症例は沖縄かハワイに移されているようですが、緊急な場合は多くがうちの病院に来られています。

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●アジア各国からもアブレーション治療に

―― 最近では日本政府のビザ緩和も進み、中日関係はよくなってきています。観光とか買い物をかねて検診や治療などの医療を希望する人たちが多くなりました。病院として、これまで中国からの手術の受け入れというのはありましたか。

長堀 アブレーション治療に中国や台湾から来られていますよ。自由診療ですが、症状を書いた普通の紹介状があれば問題ないです。
 
滞在期間、病変の大きさとか、場所によりますが、肝切除の場合が10日、不整脈の場合は3日ぐらいですね。

うちの病院は外科系が充実しており、大腸、胃の手術などの治療実績では全国トップクラスです。泌尿器科も手術件数でトップクラスです。前立腺がんとか腎がんとかは、中国も高齢化がだんだんこれから進むでしょうから、これから多くなりますよね。

私自身は、中国には30年前に上海に肝臓の学会で行ったんですよ。ご存じのとおり、中国にはB型肝炎が多いので、肝がんの治療ということで参加しました。また7年前に、肝臓がんのアブレーション治療のアジアシンポジウムを横浜で開いたときには、韓国や台湾、中国からスペシャリストの先生方に来ていただきました。

また、私はもともと横浜市大出身ですけど、山梨医大に10年余りいました。そのときの大学のミッションが「アジアに開かれた大学」だったので、10年間ぐらいインドネシアからの患者さんを受け入れ肝臓手術などをしました。その頃、患者さんは空軍司令官とか特権階級の軍人が多かったです。

当院では今、ベトナムのバックマイ病院と協定を結んでいて医師や看護師が交流しています。

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●得意分野について

―― 先生ご自身の得意とするところを教えてください。

長堀 肝胆膵(肝臓・胆のう・膵臓)の外科の高難度手術です。腹腔鏡の外科は日本に導入直後からやっていて、技術認定医(日本内視鏡外科学会認定技術取得者)です。
がん切除は京大系と横浜市大の先駆者から学びましたし、導入直後から腹腔鏡手術をやっているので、今でも肝臓外科の40%ぐらいは腹腔鏡でやっています。それと、肝臓がんの経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)です。これもアブレーションといいマイクロウェーブやラジオ波で焼くのです。焼灼療法(アブレーション)は、患者さんの体への負担が少なく、治療の効果も十分あるといわれています。そういったことから、私はそのMicrowave Surgery研究会の理事として、普及にも努めています。

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『人民日報海外版日本月刊』より転載