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〈埼玉県第1位の受診者数〉がん医療を一歩先に進んで行う専門病院

2016-04-21 16:49

埼玉医科大学国際医療センター
包括的がんセンター/消化器病センター
診療副部長、准教授 
佐藤 弘 先生

埼玉医科大学国際医療センターは埼玉県全域を範囲として、がん、心臓病に対する高度専門特殊医療に特化し、かつ高度の救急医療を目的とした専門病院である。「包括的がんセンター」には、質の高いがん診療に加え、次世代の最新の診療を生み出すための研究も求められ、厚生労働省から「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けている。
中でも消化器病センターでは、食道がん、胃がん治療は外科、消化器腫瘍科、放射線腫瘍科が連携することにより、進行度に応じた最適な治療を選択、患者の社会的背景も考慮した包括的な治療を実践。内視鏡治療や腹腔鏡下手術を積極的に導入することにより、術後疼痛の軽減、入院期間の短縮、早期社会復帰に努めている。全国でもトップクラスの治療実績を誇る。
佐藤先生は消化器外科だけではなく、栄養サポートチームのリーダーとして、医療の基本である栄養面の総合的管理にも取り組んでいる。

患者一人ひとりに最適な治療を見つけ出す

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●「包括的」の意味するもの

―― 「包括的がんセンター」の特長について教えていただけますか?

佐藤 埼玉医科大学国際医療センターは、埼玉県全域を範囲とし、がん、心臓病に対する高度専門特殊医療に特化し、かつ高度の救命救急医療を提供する病院です。中でも、「包括的がんセンター」は、最新のがん医療をそれぞれの専門家ができるように開設されました。ここでは、質の高いがん診療に加え、次世代の最新の診療を生み出すための研究も同時に行うことが求められています。例えば、がんの早期発見、性格の分析、抗がん剤の効果予測などを遺伝子レベルで行う基礎研究、さらに先進医療と呼ばれる新しい治療も同時に行っています。
「包括的」という言葉の意味ですが、患者一人ひとりに最適な治療を見つけ出すためにチーム医療を行っていることが特長といえます。具体的にいうと、初診科が外科であれ、内科であれ、適切な診療が受けられるようにマネジメントする。腫瘍外科医、腫瘍内科医のみならず、病理医、放射線医、精神腫瘍医、リハビリテーション医、専門および認定看護師、薬剤師、管理栄養士ほかの医療スタッフ全員が会議をして、一人ひとりの患者の治療にあたっているのです。
それは、患者にとって適切な医療は何かということで、私の場合、外科医として外科の治療を中心に考えることはもちろんですけど、内科的な治療がいいということであれば、内科的な治療をお勧めするということです。病気の状態、それから患者のご希望に応じて適切な医療を考えることです。

―― 「消化器病センター」と先生のご専門の上部消化管(食道、胃)医療についてお聞かせください。

佐藤 消化器病センターは、消化器内科と消化器外科に分かれていて、私は消化器外科の上部消化管外科です。
食道がんは、手術療法、化学療法、放射線療法を併用して、病気の進行度に応じた最適な治療を行っています。
胃がん治療も、早期胃がんは内科で内視鏡治療、それ以外の胃がんは腹腔鏡下手術など、患者の年齢や状態に応じて安全で確実な治療を行っています。開腹術に比べて小さな創(きず)ですむ腹腔鏡下手術を積極的に導入して、患者の術後疼痛の軽減、入院期間の短縮、早期社会復帰に努めています。
私自身は、外科手術に関して、どんな治療にも幅広く対応はできます。胸腔鏡手術から、その後の抗がん剤治療や放射線治療が極量に達しても、がんが残ってしまった場合に行う切除手術(サルベージ手術といっています)まで対応します。

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●医師も患者も諦めずに適切な医療を

―― ご自身が外科医として、力を入れていることをお聞かせください。

佐藤 まず最初の選択のときに、治すことを目的とした治療をプラスするのか、それとも少しでも症状をとって長生きをすることに重きを置くか、患者の気持ちに寄り添いたいと思います。
そして、相反することを言うようですが、治ることがしかるべき人は、安全に確実な結果を出すということと、それにプラスして、やはり従来ならば治らなかった方が少しでも治るような医療ができればと思います。
最初の治療の選択で、医療サイドも患者サイドも「もう治りそうもないからいいや」と思ってはいけない。いろいろな治療を施行して、合併症もコントロールできた、がんに対する直接的な治療効果もあった、それでもがんが残ったというとき、その後に外科的な治療を組み合わせることによって、治るような方もいらっしゃる。
難しい手術がうまくいけば、患者はもちろん私も嬉しい。例えば大動脈とか重要な臓器にくっついているような食道がんは、手術だけでは治らない。しかし、抗がん剤と放射線で一定の効果をだし、さらに外科的な治療を加えることにより治ることがある。最初は諦められていたような人たちが、そういう集学的治療によって治ることがあるのです。

―― 先生はまだお若いですが、医師としての自負のようなものはございますか?

佐藤 15年間食道がんの外科診療をやってきて、同世代のドクターよりもいろいろな手術や管理を数多く経験してきているということです。手術そのものだけではなくて、術前や術後の管理などの経験があるというのは少し自負しています。
あと私は、栄養管理のチームリーダーとして、栄養管理を医療の基本だと考え、重症例も多く難しいですが、最適な栄養管理を提供できるよう努力しています。

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●術後のアフターフォローも大事

―― 貴院では中国との医学交流はありますか? 先生ご自身は、中国からの患者を診られたことは?

佐藤 消化器外科に中国の研修の先生が来られていた時期もありました。個人レベルでは、国立がんセンターで同僚だったドクターが上海胸科病院の教授をしており、親友なので、手術の見学も3回ぐらい行きました。私はその病院で日本の食道がん治療について2回ほど講演をしました。
中国人の患者については、以前いた病院で受け持ったことはあります。
ここで手術をした場合ですが、まず入院期間は目標としては手術後2週間で退院できるようにはしています。ただ、メディカルツーリズムをしようとすると難しい部分がありますね。食道がんの場合、長期間の入院を要する合併症が起きる可能性があるということと、あと、手術後もできればきめ細かく、例えば食事の指導とか、運動のリハビリとか、アフターフォローも大事になってくるからです。
費用については、手術代と入院費を合わせて、自由診療ですと二百数十万くらいです。

『人民日報海外版日本月刊』より転載