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マスコミ報道

副作用は最小、 効果は最大の高精度放射線治療 ——柏原 賢一 東京放射線クリニック院長に聞く

2015-09-03 09:53

文/蒋豊

30年前の中国では、「癌」はまだ新しい言葉だった。しかし、現在がんは中国でもごく普通の病気になった。中国の全国腫瘍登録センターのデータによると、毎年312万人ががんを発症しており、がんで死亡する人は年間200万人を超えている。1分ごとに6人ががんと診断されていることになる。しかし、残念なことにがんにはまだ特効薬がなく、現在の治療法は手術、抗がん剤治療、放射線治療、そして補助的な食事療法しかない。多くのがん患者に、最も理想的な治療方法は何か質問したことがある。得られた回答は「日常生活に影響せず、生活を変えずにおこなう苦痛のない治療」というものであった。これは可能なのだろうか。ワシントン大学とハーバード大学で研究、臨床経験を積んだ東京放射線クリニックの柏原賢一院長は、「高精度放射線治療はこの理想を実現できる」と語った。

放射線治療は日常生活に影響しない

—— 統計によると、1981年以来、がんは日本人の死因第1位となり、生命を脅かす病気として毎年30万人以上もの方ががんで亡くなっています。がん治療には外科手術、抗がん剤治療、放射線治療の三つの治療法がありますが、手術や抗がん剤と比べると、放射線治療の根本的な違いはどこにありますか。

柏原 放射線というとイメージが悪いようで、特に日本人は、がんは手術しなければ治らないと誤解している人が多いのです。しかし、外科手術によって体は痛むし、免疫力も落ちます。抗がん剤を投与すればがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響してしまいます。

当院では、IMRT(強度変調放射線治療)とSBRT(体幹部定位放射線治療)と増感剤を組み合わせた放射線治療を提供していますが、放射線治療の長所は、治療期間中、患者様の日常生活にあまり影響を与えないと同時に、治療後の生活の質を落とさないようにできることです。治療中も痛みはなく、ただ機械の音だけが聞こえて治療している感覚がないとおっしゃる患者様もいらっしゃいます。ゴルフが終わってから来院して治療を受ける患者様も多いですし、治療が終わってから友達と飲みに行くという方もいます。

前立腺がんの場合、手術後はほとんどの患者様に尿失禁や機能障害などの後遺症が出ます。従来の放射線治療後には膀胱と直腸にも約20%~30%の確率で出血が見られます。

一方、IMRTでは専門のコンピューターを使い、多方向から強弱をつけた放射線をがん腫瘍部分に集中して照射することにより、従来の放射線治療と比較すると、正常な細胞の損傷を最小限に抑えながら理想的な放射線量を得ることが可能で、前立腺がんの直腸・膀胱出血を大きく減少させることが出来ます。また、頭頸部がんの唾液腺障害などの副作用も大幅に減少できます。

SBRTはがん腫瘍に対してピンポイントに当てることが可能なため、従来の放射線治療に比べ、治療効果が高く、大きな副作用はありません。当院では最新機器Trilogyを導入し、IGRT (画像誘導放射線治療)画像を利用してSBRT、IMRTを行っています。

副作用が少なく、治療効果は手術と同じで、さらに患者様の男性機能にも影響しません。乳がんの治療の場合、女性の特性を保護できるように、増感剤を組み合わせて放射線治療を行います。

高精度放射線治療の最大のポイントは治療前の位置決めを治療計画時のCTと同じにすることです。当院での位置決めには、治療直前に治療台の上でCT撮影して多角的に位置合わせを行い、放射線を当てます。腫瘍の局所制御率を高めるのと同時に、正常な組織の損傷を減らし、形状が複雑で運動状態にある腫瘍へも正確な照射量を確保することができ、放射線治療の精度を大幅に向上させます。

IGRT は、実際の治療で放射線をあてる位置決めと治療実施の誤差を減少させ、IMRTやSBRTなどの高精度放射線治療をより高い位置精度で行うための技術であり、がん腫瘍以外の正常組織に放射線があたることを最小限にし、治療を安全に行うことができるので、患者様の満足度が高いのです。

迅速で、効果が高く、高精度な治療

—— 同類の医療機関と比べて、貴クリニックはどのようなところが優れているのでしょうか。

柏原 放射線治療をしている他の医療機関に比べると、当院には三つの特長があります。第一に、当院は日本でも数少ない、副作用が小さい高精度放射線治療ができる専門クリニックだということ。

第二に、スピーディーということ。初診から放射線治療を始めるまで2日~7日間しかかかりません。他の医療機関だと平均2、3週間かかります。当院での治療は1回通常15分間で、患者様は仕事が終わってから、あるいは昼休みに治療することもでき、特別に治療時間を作る必要はありません。

第三に、当院は患者様に対して治すための治療を提供するだけでなく、緩和治療も提供できるということです。ほかの病院で治療できないと言われたがん患者様も、当院では苦痛を和らげる緩和治療が受けられます。放射線による緩和治療で80%の患者様が痛みから解放され、食道がんによる狭さくや胃がん、大腸がんによる出血もなくなりました。

患者の希望に沿って治療

—— 先生は日本では有名な放射線治療の権威ですが、なぜこの分野を選ばれたのですか。また、患者と接する時に一番気をつけていることは何ですか。

柏原 アメリカには病理医師や放射線医師を主人公にした小説がたくさんありますが、業界小説で有名なアーサー・ヘイリーの『最後の診断』もその一つです。私は中学生くらいの時にこの本を読んで、病気を最終的に判断する医師という職業にあこがれました。

患者様と接する時には、患者様の考えを理解することを大事にして、最大限に患者様の希望に沿って治療するようにしています。患者様の多くは、他の病院での治療方針が不満で当院にいらっしゃいます。そして、多くの患者様は治癒したり、がんの進行を抑制できたことに、予想外の喜びを感じてくださり、当院には患者様や家族の方からのお礼のお手紙がたくさん届いています。

私の趣味はゴルフで、年に何回か行くのですが、患者様と一緒に行くこともあります。これは、当院で放射線治療を受けた患者様は治療による副作用が小さく、治療後も普段どおりの生活を送られているということを示しています。

高精度放射線治療を中国人患者にも

—— あるデータによると中国では1分間に6人ががんを発症しており、今では「がん大国」となりました。貴クリニックは中国人患者を受け入れていますか。中国人観光客が日本滞在期間中に治療を受けることはできますか。

柏原 IMRTは1回15分ほどで、1クール2カ月間です。SBRTは1回の治療が30分から1時間、1クールは4日から10日ほどです。中国人の患者様でしたら、治療期間が短いという点ではSBRTのほうがいいでしょう。もちろん、患者様の病状によって望ましい治療法は異なります。

患者様は中国から中国国内の診断書やカルテなどを持っていらっしゃるかもしれませんが、両国の医療水準は違いますから、患者様には治療前に当院で一度精密検査を受けることをおすすめします。当院では患者様の病状とニーズによって各種の治療法を提案します。

私はすべてのがん患者様に高精度放射線治療のことを知っていただき、日常生活に影響せず、最小の副作用でがんの克服に最大の効果があるこの治療法を選択肢の一つとして検討してほしいと思います。

 

取材後記

インタビュー終了後、恒例により柏原先生に揮毫をお願いしたところ、「優」と一文字書いてくださった。これは日本語の「優しい、親切」という意味を含んでいる。柏原先生はこのような「優」の心でがん患者にもっとも「優しい」治療を提供しているに違いない。

情報元:人民日報海外版日本月刊