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「病は待ってくれない。最高の医療に国境はない」——三角 和雄 千葉西総合病院院長に聞く

2015-07-07 16:58

文/蒋豊

2015年3月19日、365日24時間救急患者を受け入れている千葉西総合病院は、慣例を破り、病院の中枢部分である6つの血管造影手術室(カテーテル室)につながるカテーテルスタジオに入室させてくれたが、そこで指揮を執る三角和雄院長はまるで巨大な宇宙戦艦の艦長さながらであった。そこは6室の血管造影手術室の真ん中に位置し、天井からつり下げられた2台の大型モニターとデスクトップの6台の中型モニターによって各室の進行情況を見て、すぐに指示を出すことができる。自分自身の患者の他も困難な症例があれば、三角院長がすぐに駆け付けて自ら治療する。各手術室には、担当医師のほか、放射線技師、臨床工学医師(ME)、臨床検査技師、看護師もいるが、彼らは皆全国から集められた精鋭部隊だ。このカテーテルスタジオで三角院長は一日平均15人、多い時で20人以上の心臓病患者の治療をおこなっている。医師同士の評価によって選ばれる「The Best Doctors in Japan」に5期選ばれていて、国内外から多くの患者がその名声を慕ってやって来る。日本で一、二を争う多忙な院長は、このカテーテルスタジオでインタビューを受けてくれた。

日本に5台しかないD-SPECT使用

―― 心臓病は日本人の死因の第2位ですが、この現状の原因について、世界に知られた名医である院長先生はどのように分析されていますか。また、心疾患治療の現状と課題について教えていただけますか。

三角 以前、日本の食習慣は野菜が主でしたが、次第に西洋化してきて、動物性タンパク質中心の脂っこい食事が好まれるようになったため、高コレステロール、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などの心臓血管疾患の多発を招きました。

患者様に治療をおこなう時、私はできるだけ患者様の体に負担をかけない低侵襲手術を採用し、局部麻酔を使用しています。

私個人としては、三つの点をポイントとしています。一つは患者様に最も合う手術方法を選択することです。当院のカテーテル治療には、バルーン、ステント、ロータブレーター(高速回転冠動脈アテレクトミー)、エキシマ・レーザーなど多くの手術法があり、たとえ同じ病状でも患者様の身体状況によって異なる手術法を選択できます。第二に、手術後の患者様が早く普通の日常生活に戻れるようにすることです。もし手術後に車椅子生活になったり、脳梗塞などの後遺症が残れば、普通の生活とはいえません。第三に、心臓血管外科と循環器内科(心臓血管内科)との密接な連携によってすべての症状に対応するということです。

現在当院には1つのハイブリッド手術室を含む7つのカテーテル室、24床の集中治療病床と608床のベッドがあり、診療科は内科、外科、小児科など20以上にのぼり、屋上にはヘリポートもあり、多くの救急患者がヘリで搬送されてきます。

2014年の1年間だけで、当院では心臓カテーテル治療3017例、過去にロータブレーターによる石灰化病変治療3000例以上、エキシマ・レーザーによる血栓症疾病治療600例以上、末梢動脈血管疾病(PAD)治療3000例以上、頚動脈ステント留置術700例以上をおこない、日本全国で同種の手術を最も多くおこなっている病院です。

私個人でも、一日平均10~15人の心臓病患者の手術をしており、多い時には診断カテーテル検査を含めて70件になります。当院にはさらに24時間365日無休のモニタールームがあり、入院患者様の体調の変化を時々刻々把握することができます。また、全国に3台しかない体外衝撃波心筋血行再建術(ESMR)の装置や、5台しかないD-SPECT(心臓用半導体SPECT システム)も備えています。

 

外国人患者専門の職員も

―― 中国は今、医療ツーリズムがトレンドになっています。これまで数多くの外国人患者の診察もされ、日本で有数の中国人患者を受け入れている病院だと伺っていますが、どのような状況ですか。

三角 私は、最高の医療には国境はなく、いかなる人も最高の最先端の医療を受ける権利を持っていると考えます。それぞれの国に医学領域で最も先進的な部分があります。例えば日本では心臓血管治療が進んでいますので、多くの患者様が治療を受けに来日します。

当院では積極的に外国人患者様を受け入れています。国籍は関係なく、5名の多言語に精通した医療スタッフを置いて外国人患者様に心を込めたサービスを提供しています。

ですから、中国、モンゴル、インドネシア、アメリカからの患者様が多いのですが、その患者様のほとんどが一泊だけ入院し翌日退院できます。当院は厚生労働省の「医療機関外国人受け入れ環境整備事業」の全国10拠点病院のうちの一つに選ばれています。

来院当日に診断、手術し翌日退院

―― 貴院では手術を受けた翌日に退院できるとのことですが、これは中国人患者にぴったりで、旅行に影響しないし、入院費を心配することもありません。貴病院ではなぜそれが可能なのですか。

三角 一般の病院では、まず予約してから検査を受け、検査結果が出るのを待ってから手術をします。ですから、患者様がはじめて来院してから手術までの間に数週間から1カ月以上たってしまいます。しかし、狭心症の発症は急な場合が多く、手術を待っている間に病状が悪化するかもしれません。

ですから、当院では他の総合病院と違い、はじめて当院を受診する患者様は事前の予約は必要ありません。このようにした理由は、患者様が不調を感じた時にいつでも来院でき、来院したら最速のスピードで診断、手術を受けることができるようにしています。

来院当日に診断結果を出し、当日中に手術をします。もし心臓カテーテル治療でしたら、ほとんどが翌日には退院できます。例えば、流山市に住む72歳の男性患者様は午前9時に近所の病院で心電図をとったところ、医師が心電図に異常を見つけたため、当院に来るように勧めました。この患者様は午前10時半に当院に到着し、11時には心臓CT、エコーなどの精密検査を受けて、冠動脈狭窄が発見されたため、午後5時半に私が病状と手術プランについて説明し、午後9時半にカテーテル室に入り、午後11時に手術が終わり、翌日午前10時に退院しました。

またインドネシアから来た男性患者様の場合、彼は4年前に当院で検査を受け、狭心症が発見され、当日手術して翌日退院したのですが、彼はこの高効率、高レベルの診療方式が気に入り、2年に一度検査し、問題があればすぐに手術をしています。

来院当日に手術を受けることは患者にとって三つのメリットがあります。一つは、1回局部麻酔を行うだけなので、治療時間がムダにならず、患者様の精神的なプレッシャーも小さくなります。もし3週間後、あるいは3カ月後の手術をするということになると、患者様は手術台に上がるまでずっと不安を感じることになります。もう一つは、社会のテンポに合わせ、患者様の生活と仕事に影響しないということです。もし土曜日に手術をすれば、日曜日の午前中には退院でき、家で1日休み、月曜日にはいつも通り出勤でき、日常生活や仕事に影響しません。三番目は患者様の経済的負担が小さいということです。診断と治療が同じ日におこなわれますから、患者様が負担する入院費、交通費、手術費用を軽減できます。

日本の一般の病院ではこのようなスピーディーな対応はできません。ですから、当院の循環器内科の外来患者様は1日100人を超え続けています。年間平均3000人が当院で心臓カテーテル治療を受けていますが、この数字は日本全国で5年連続1位です。

年中無休・24時間オープン救急を絶対断らない

―― 医師を志したきっかけは何ですか。また、先生の医療哲学について聞かせてください。

三角 私は小学校3年生の時にリウマチ熱にかかり、とても辛い思いをして約2カ月入院しました。当時の小児科の医師が私にとても良くしてくれたので、私は医師になろうと思ったのです。

私は東京医科歯科大学を卒業後、大学病院第三内科に勤務したのち、アメリカに留学し、12年間の臨床経験を積みました。2、3年ごとに勤務する病院を替えて、最新医療技術を学び続けました。この経験によって日本にいるより数十倍、数百倍の症例に触れることができ、各領域の最先端の医療技術を学ぶことができました。帰国後、私は自分の医療技術を最大限に発揮できる医療機関を求め、2004年に千葉西総合病院の院長に就任しました。

医師たちを指導、トレーニングする際、私のスローガンはアメリカ空軍の新兵募集と同じで、「Aim High!(大望を抱く)」です。その結果、当院の医師は他の医療機関の医師たちよりも早く日本内科学会、日本循環器学会の専門医と指導医の資格を獲得しています。

私の医療哲学は、病気は待ってくれない、待っても病状は好転せず、最速で治療をしなければならない、ということです。生命の前で人間は平等ですから、患者様が安心して生命を預けられる病院にしなければなりません。

ですから、当院はベッドが満床だったり、主治医がいないからと患者様を拒絶することを許しません。各科の主治医は24時間の当番制です。毎日朝礼の席で、私は病院の医療スタッフ全員と当院の三原則「年中無休・24時間オープンで救急を絶対断らない」を唱和します。

当院は世界でも最先端の医療設備と医療技術を有しており、多くの患者様の入院は1泊だけであり、手術の成功率はほぼ100パーセント、外科、内科などすべての領域で集中治療を提供できます。

取材後記

取材終了後三角院長は、中華料理が大好きで、一番好きなのは麻婆豆腐と青椒肉絲だと教えてくれた。以前北京の心臓専門病院の招聘を受けて交流した時に贈られた記念品を大切にしており、家に飾っているということだ。そして、チャンスがあれば中国を訪れ中日両国の医療交流を深めたいと語った。

情報元:人民日報海外版日本月刊