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「薄毛には植毛が最も効果的」——柳生 邦良 国際毛髪外科学会長、 紀尾井町クリニック院長に聞く

2015-07-07 16:28

文/蒋豊

髪の毛は人のイメージの重要な要素であり、他人にどのような第一印象を与えるかを決定づけるものである。昔から、ふさふさした髪は健康や若さ、パワーのシンボルとされ、生活のクオリティー、社会的地位と結び付いている。しかし薄毛や脱毛は、個人の魅力への影響は言うまでもなく、心の健康や精神衛生、生活の質にもマイナスの影響をもたらしている。現在、市場には薬品、サプリ、洗浄、マッサージなどさまざまな育毛法があり、派手に宣伝されているが、効果てきめんというわけにはいかず、あせりや失望を生んでいる。そこで、紀尾井町クリニックの「ゴッドハンド」である柳生邦良院長を訪ね、専門の薄毛、脱毛分野における永久的かつ即効性のある治療法についてお聞きした。柳生院長は本年9月、1993年に設立され70カ国以上の1200名を超える植毛専門の医師たちによって組織されている国際毛髪外科学会(ISHRS)で、アジア人初の会長に就任する。薄毛、脱毛の最も根本的な治療法は植毛だと柳生院長は語る。現在、すでに日帰り手術も可能となり、自身の毛髪の移植によるので拒絶反応もなく、植毛の全過程は数時間と短く、入院や再診も不要なため、短期的に来日した外国人観光客でも気楽に、便利に移植手術を受けることができる。

 

脱毛、薄毛を根治するのに最も有効なのが植毛

―― 古来、地位が高い人ほど自分の髪を意識します。ある研究によると、軽々しくヘアスタイルを変えないのが偉人の特長だということで、「貴人」のプライドを保つために、中国には「貴人は髪を重んじない」という言葉もあるほどです。ここから、薄毛、脱毛が与える心理的影響と社会的影響の大きさが見て取れます。この分野の専門家として、薄毛、脱毛の根本的な治療法は何かを教えていただけますか。

柳生 治療方法ということでは、目に見えて効果が現われる方法は植毛しかありません。さらに自身の頭髪を移植すれば拒絶反応も起こりません。頭皮を清潔に保たなければならないとか、頭皮のマッサージが必要だとか言われますが、それらは頭皮自体には良いことですが、薄毛治療には関係ありません。一番分かりやすい例として、ホームレスの人たちは衛生、栄養に注意を払っていませんし、頭皮の清潔やマッサージに気を配っていないようですが、彼らの多くは髪の毛がぼさぼさに密生しているではありませんか。

人の髪の毛は前の髪と後ろの髪の2種類あります。見たところは同じなのですが、細胞の構造が異なります。前の方の髪は徐々に細くなり、見えなくなっていきますが、後ろの髪は太くて、一生の間変化しないのです。ですから、私たちは後ろの髪を一部前の方に移植する手術をします。これによって生えてきた髪の毛は変化しませんから、一回の手術で効果が続きます。後ろの髪の毛を前に移植するということは、毛根ごと移植するということですので、一生変化せず、生え続けるのです。

 

心臓外科医から植毛の「ゴッドハンド」に

―― 院長は以前、数千例の手術をおこなった著名な心臓外科医だったとのことですが、植毛のスペシャリストへと転身された契機は何ですか。

柳生 植毛の専門家になったのは、偶然からなのです。

私は東京大学医学部卒業後、27年間心臓外科医として仕事をしてきました。心臓外科の特別研究員としてドイツに留学もしました。日本の赤十字会最大の病院である日赤医療センターの心臓外科部長として7年半勤務し、数千例の手術をしましたが、自分でも満足のいく成績を挙げました。

大学卒業直後は消化器外科にいたのですが、だんだんと物足りなくなってしまい、もっと難しい分野に挑戦したくなって心臓外科に転科しました。当時はまだ若くて体力もありました。日赤医療センターは小児と成人の手術を分業しないので、私は土日もなく、朝から晩まで仕事をしました。深夜に呼び出されて緊急手術をすることもしょっちゅうありました。しかし、年齢を重ねるにつれて、体力がついていかないと感じるようになりました。

ドイツのハノーバー大学に留学していた時、私は顕微鏡でラットをつかった心臓と肺の移植の実験をしていました。そのデータは世界的に有名な医学誌にも掲載され、同時に移植後の拒絶反応に関する論文も発表しました。このような細かい作業がその後の心臓外科手術の基礎を作ってくれました。

その当時はまだ移植後の調査データはなく、私のデータがはじめてでした。その後年月を経て、日本の植毛クリニックから連絡がありました。私の論文を読んで、私には手術の腕があり学術研究とリサーチもできると知って、一緒にやらないかとの申し入れでした。ちょうどその頃、心臓外科の第一線を退こうと思っていたので、お受けしました。そして、今のクリニックに来たのです。

 

日帰り手術が可能

―― 以前には、薄毛や脱毛は年配者の悩みだと思っていましたが、今は社会のテンポも早く、プレッシャーも大きいし、仕事は忙しく食事は不規則になっており、20代、30代で毛髪の問題に直面します。これは彼らの就職や結婚の障害にもなっています。紀尾井町クリニックの治療の特長は何ですか。また、なぜ一番人気のあるクリニックになったのですか。

柳生 おっしゃるとおりです。私もこのクリニックに来た当初は患者のほとんどは年配者だと思っていました。しかし、患者のデータを見ると、20代と30代の患者が全体の7割を占めています。彼らはまだ広範囲の薄毛ではありませんが、生え際が後退しつつあるところです。私や周囲の人が見ると、年齢相応なのですが、彼らはこれを受け入れることができず、18歳のころに戻りたいと希望しているのです。髪が乱れたり、濡れるとひたいが出てしまうので雨や風の日には外出しないとか、集合写真を撮りたくないから同窓会にも出席しないとか、日常生活のなかで必死に隠そうとします。

そのような患者様が植毛後は、髪が増えるにつれて劣等感が減り、生活態度も積極的に変わり、仕事でも自分をアピールできるようになり、家族や友達と外で写真を撮りたくなるのです。患者様が喜べば周りの人もうれしいし、私もうれしいですね。

当院の競争力、人気の秘密は、日帰り手術でしょう。手術当日に帰宅できますから、仕事や生活に影響しませんし、患者のプライバシーも保てます。

 

中国人患者も多数来院

―― ここ数年、中国人の訪日観光客は大変な勢いで増えています。その多くがリピーターであり、日本での医療ツーリズムも新しいトレンドになっています。入院が不要で再診もいらない植毛手術は、中国人観光客にとって受け入れやすいのではないでしょうか。先生は中国人患者を診察されたことはありますか。中国人患者が植毛手術を受けるにはどのようなプロセスが必要ですか。

柳生 普通は手術前に患者様と面接してコミュニケーションをとります。患者様の実際の情況を見て、手術方法を提案します。どこにどれだけの毛髪を移植するかなどが最も重要で、患者様といっしょにヘアスタイルをデザインし、髪が伸びた後も見苦しい髪型にならないようにしなければなりません。しかし、患者様が同意しても、すぐには手術しません。1週間から1カ月考える時間を差し上げて、患者様に植毛の必要性を納得していただきます。もし患者様が熟慮の結果、やはり手術したいということであれば、手術の日程を決めます。患者様は朝来院すれば、午後には手術は終わります。休み時間には食事もできますし、手術中もリラックスして音楽を聞いたり、映画を見たりしていただきます。痛みはなく、緊張する必要もありません。

私は英語と日本語しか対応できませんので、現在までに何人かの中国人の患者様に植毛手術をしていますが、皆さん通訳を伴って来院されています。日本にいる友人の紹介や、学会や雑誌で私の存在を知り、苦心して私に連絡をくれます。最近上海の患者様二人がメールで連絡をとってきましたが、彼らは頭の写真を送ってきて、どこに植毛したいか、どのような形の眉毛にしたいかを告げてきました。何度もメールのやりとりをして、手術の日程を決めましたが、彼らは東京に滞一日だけ滞在すればよいのです。

私の患者様のなかには、国内外を問わず、ほとんどが手術の翌日には飛行機に乗って休暇を過ごしに行きます。植毛後のケアは簡単で、自分でできます。一般に手術当日は少し痛みがありますが、半数以上の患者様は痛み止めの薬を飲む必要もないほどで、睡眠にも影響しません。手術翌日には痛みはなくなります。患者様が分からないことがあったり、また少し膿が出たりすることがあったりしたら、いつでも私に電話やメールで問い合わせられます。

 

アジアの植毛ドクターが発言権を勝ち取る

―― 植毛の「ゴッドハンド」として、先生は世界的な名声をお持ちです。国際的に最も権威のある組織である国際毛髪外科学会(ISHRS)設立以来、アジア人初の副会長に、そして会長になられるとお聞きしましたが。

柳生 ええ、今年9月には会長に就任する予定です。国際毛髪外科学会でアジア人初の会長になります。この学会は入会して20年以上のベテランの米国人ドクターがたくさんいますが、そのなかでアジア人としてはじめての会長に選出されました。これは私個人だけでなく、日本やアジアの名誉でもあります。

現在、国際毛髪外科学会には70以上の国家の1200名以上の会員がいます。一昨年まで会員の49%が米国人ドクターでした。副会長に選出された後、私はアジア人ドクターを増やし、アジアの人々に薄毛の正しい治療法と自毛植毛を普及したいと考えました。そこで、定期的に学会をアジアで開催し、アジアの植毛分野に最新の臨床医療と医学理論を発信し、植毛専門のドクターに学習や研究の機会を持ってもらい、アジア社会に医療と手術の最新情報を提供しています。現在、学会のアジア人ドクターの会員はどんどん増えており、米国人ドクターの比率は以前の半分から三分の一に下がりました。

 

取材後記

柳生院長に恒例の揮毫をお願いすると、「慈愛」の二字を書いてくださった。そしてこう語った。「患者様にとって植毛手術は、普通の見慣れた手術ではなく、食品を選ぶように味見してもっといいもの、自分に合うものを探すというわけにはいきません。ですから、手術を執刀する医師は精緻な技術と豊富な経験のほかに、患者様のために長期的なプランを立て、世界に笑顔を増やそうとする慈愛の心を持たなければならないと思います」。

情報元:人民日報海外版日本月刊