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東洋人の美容は東洋人の手で——白壁 征夫 サフォクリニック院長・医師

2015-07-10 16:40

文/蒋豊

若返りは夢ではない

―― 先生は国際的に認められた美容外科の専門家であり、フェイスリフト手術の分野では日本の権威ですが、なぜ日本人はフェイスリフト手術を受けるのでしょうか。

白壁 現在ではアンチエイジング(若返り)という言葉が知られるようになってきましたが、20年前にはまったく知られていませんでした。私は1986年に米国美容外科学会で「東洋人のためのフェイスリフト手術」を発表し、ウォルター・スコット・ブラウン賞を受賞したのですが、アメリカ人からは「なぜ日本人はあのように若々しいのにリフトアップ手術が必要なのか」と聞かれました。

しかし、現在私どものクリニックを訪れる患者様の3分の1はフェィスリフトやバストアップなどアンチエイジングの手術のためです。人間は歳をとると、顔や胸のラインが下がってきます。以前の美容外科といえば、目や鼻や口などを整えて、徹底的に容貌を変えたいというものでしたが、現在では若返りを希望するようになっています。

―― 経済成長にともなって美容外科へのニーズが出てくるのは自然なことで、中国はまさにそうなっています。しかし20年前の日本はバブル経済崩壊の時期でした。なぜ日本人はそのような時期から若返りに関心を持つようになったのでしょうか。

白壁 良い質問ですね。バブル経済の崩壊期、日本の経済状況は確かに良くなかったのですが、人口は逆ピラミッド型となり、高齢者が増えました。その高齢者こそバブル期にお金を儲けた人たちでした。彼らは財力を持ったので、医療の力で若くなりたいと思うようになったのです。

アジア人の美容はアジア人の手で

―― 世界の中では、やはりアメリカの美容外科が最先端を歩んでいるのでしょうか。日本の美容外科は世界の中で、どのような位置づけにありますか。今後の課題と取り組みについて、お聞かせください。

白壁 私は20年前に渡米しましたが、当時はアメリカに比べアジアの美容外科手術はやや立ち後れており、手術の基準も欧米によって制定されていました。

しかし、この10年間でアジアの美容外科は大きく進歩しました。アメリカ人はかつて、アジア人は美容外科手術に金を使わないと考えていましたが、現在の状況はまるで逆になりました。

アジア経済はますます強くなり、美容外科手術を受ける人は数えきれません。ですから、現在では業界のターゲットも変わり、アジア人の手術はどうすべきかということを考えるようになりました。

以前は西洋人医師の水準に追いつこうとしていたのですが、現在は私たち自身でアジア人の手術について考えています。かつてアメリカの医師はアジア人の行う美容外科に疑問を持っていましたが、現在ではもう全世界で当たり前のこととなっています。

 日韓の医師は意識に差

―― アンケートによると、中国人は自国で美容外科の手術を希望する人が多いのですが、さまざまな理由により、まず韓国での手術を考えるようです。美容外科の世界で韓国の技術はどう見られているのでしょうか。

白壁 韓国の医師たちもアメリカで勉強し始めて、帰国後に西洋人と東洋人の顔はまったく違うということに気づきました。現在、日本では医師と患者は、美容外科の効果は自然であるほど良いという理念で一致していますが、韓国の医師は大きな変化がなければ美容外科手術の意味がないと考えています。その意味で、非常にアグレッシブです。

この点が韓国と日本の大きな違いです。韓国で手術を受けた患者様が当クリニックにいらっしゃいますが、皆さん本当はそんなに大きく変えたくなかったようです。手術の進歩にともない、人々の意識も進歩しています。

我々の先輩方が二、三十年前に手術をしていた頃、患者様たちは西洋人のような顔にしてほしいと言っていました。鼻を高くして、眼をパッチリさせて、あごのたるみをとるという手術によって、みな同じパターンの「整形顔」になりました。

そのような手術を我々は長年やってきて、多くの「整形美人」を作り出しました。しかし、今は違います。柔らかいラインが好まれ、「自然美」が求められるようになりました。

―― 韓国と日本の美容外科の技術にはどんな違いがありますか。

白壁 技術にはさほど差はないと思います。最もベーシックな技術は形成外科の手術の分野であり、自動車事故や、やけどなど修復手術は必ずしなければならないものです。

実は美容外科の手術自体はそれほど複雑ではなく、凹んだところを持ち上げる、基本的なものです。しかし、もし基本的なもの以外の問題に遭遇した時、例えば鼻のシリコンが崩れたり、また豊胸のシリコンが硬化したといった状況では形成外科の技術が必要になってきます。

私自身はアメリカの形成外科学会員でもあり、また美容外科学会員でもあります。アメリカでは形成外科のメンバーが美容外科の主力です。日本でも現在、形成外科をベースに美容外科をつくろうとしていますが、やはり監督が厳しくないという問題が存在します。

ですから昨日は産婦人科の医師だったのに、今日は美容外科の医師に変身するということもあり得ます。美容外科は韓国で非常に繁盛していますが、監督をさらに進めていく必要があると思います。

中国の美容外科医の強み

―― 中国では整形美人コンテストが行われるほど、美容整形がブームです。国際美容形成外科学会の調査によると、豊胸手術、まぶたの整形手術の施術件数で中国は世界1位。世界の整形手術の中心地も将来的には中国に移行するかもしれないと言われています。こうした中国の美容整形の現状をどのように見ていらっしゃいますか。

白壁 悪いことではないと思います。手術数の多さは中国特有の強みです。この言い方は失礼かもしれませんが、医師にとっては手術数が多くなるほどテクニックも上がりますから。この点で中国は素晴らしいですし、価格も安い。基礎さえできれば、発展の余地は大きいでしょう。

そのほか、中国の大きな強みは患者の心理です。日本人は一般的に恥ずかしがりで、他人に自分が美容外科手術をしたことを知られたくないのですが、中国や韓国の方は喜んで分かち合い、自分が整形したことを堂々と宣言し、コンテストに出場さえします。技術がもっと向上すれば、中国の美容整形は世界一になると思います。

 ―― 中日関係は現在冷え込んでいますが、日本に美容外科手術を受けに来る人は増え続けています。中国市場のニーズに対し、日本はどのように対応するのでしょうか。

白壁 美容外科と政治とはあまり関係ないでしょう。中国には楊貴妃を初めもともと多くの美人がおり、美に対して深い造詣と思想がありますから。それに今も銀座を歩けば中国人があふれています。人の美に対する追求は、政治問題に妨げられるものではありません。

若く、美しく、健康でありたいと願うことは人類共通のニーズであり、国境はありません。政治家がどう言おうと、彼女たちは積極的に美を追求しており、ますます多くの人が自分を変えようとしています。当クリニックでも毎日少なくとも2人の中国人患者が来ています。

 

美容整形の「美」にはリスクも

―― 美しくなるために日本に2週間の「美容整形の旅」に来る中国人観光客もいます。このような「美」にリスクはないのでしょうか。

白壁 これは非常に大事な問題です。美容というものは実は急速に美しくなる方法はありません。以前の日本でも、スターの写真を持ってきて、その顔にしてほしいという人がいました。そういう人たちの気持ちは分かるのですが、相手の顔を見るとやりにくいのです。

美容外科手術は人をもっと若く、もっと美しくするものであり、患者様の要求に完全に応えて、変えたいように顔を変えるというものではありません。

外国から来られる患者様の中には、私たちを困惑させる方もいます。当クリニックではまず患者様に対して全面的な検査をしてから、患者様自身の条件と希望に沿って手術の過程を相談し、その上で手術を実施します。しかし、観光ビザで来られた患者様は2週間という滞在時間しかありません。

中には、1週間で2つの手術を求められる時もあります。これでは質を保証できないだけでなく、さらには大きなリスクを伴います。2週間後に患者様が帰国して、もし不具合が発生したとしても、すぐに戻って来て処置することはできません。

私たちはメディカルツーリズムなどにおいて、美容外科手術を受けようとする患者様には関連する知識を理解してもらい、医師と十分なコミュニケーションをとって手術を受けてもらいます。ムリな判断をさせないことで、リスクを最低限まで減らせるのです。

―― 先生は東京医科大学を卒業後、1989年にサフォクリニックを開業され、この分野での権威となられましたが、そもそも美容外科の医師になろうと思われたきっかけは何でしょうか。

白壁 私の父は美容外科の医師でしたので、私はそのDNAを持っているといえるでしょう。父は私に跡を継いでほしいと言っていました。

私はもともと慶応義塾大学の法学部卒で、縁もゆかりもない専攻でした。私が法学部に進学した頃、日本は不景気で就職難でしたが、父の事業はまったく景気の影響を受けず患者は依然として多いことを知りました。私はいろいろと考え、美容外科医師は自分の考えを実践に移し、自分のやり方で美を創造できる職業だと思ったのです。そこであらためて東京医科大学を受験し、卒業後にこの道を歩き始めました。

若い医師を養成したい

―― 中国への進出をお考えですか。中国にはどのような印象をお持ちでしょうか。

白壁 中国には何度も行っています。よく会議に参加しますから。上海、北京ともに行きました。中国からも多くの医師が日本に学びに来ています。中国の医師たちとはいかに中国で美容外科事業を展開させるかを話し合っています。

私はもう歳をとったので、中国でクリニックを開く元気はありません。でも、日本で若い世代の医師を養成したいという希望を持っていますので、若い中国人医師が来ることを歓迎します。やはり、東洋人の美容は東洋人の手で作るべきだと思います。

情報元:人民日報海外版日本月刊