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東京・銀座で、三時間で痔の悩みを解決——岩垂 純一 診療所所長に聞く

2015-07-11 11:25

文/蒋豊

中国では「男性は10人に9人、女性は10人に10人が痔を患っている」と言うが、人知れず悩んでいる人は多い。しかし、患部が特別であることから、多くの人が沈黙し耐えている。だが、手だては必ずある。医療環境に優れ、医療技術の進んだ日本に、日帰り手術(Day Surgery)の可能なクリニック——岩垂純一診療所がある。診療所は東京一の繁華街である銀座の、和菓子の名店「風月堂」ビル内にある。岩垂純一所長には40年の肛門疾患治療の経験があり、NHKの「きょうの健康」に数多く出演され、『もう痔で悩まない、かくさない、最新・痔の疾患の予防と治療』等、10冊近い著作がある。一般的に、痔の手術には手術する医師が下半身麻酔を施し、術後は行動の不便、ときには、めまいや頭痛が生じるため、短くても2~3日の入院が必要とされている。ところが、岩垂純一診療所では麻酔科専門医が静脈麻酔を行い、麻酔で眠っている内に手術は終了し患者は術後すぐに帰宅できる。要する時間もわずか3時間ほどである。2015年4月6日、高級ギャラリーのような診療所に、肛門医療の名医岩垂所長を訪ねた。岩垂所長はこれまでに『日本経済新聞』、『朝日新聞』、『読売新聞』、『毎日新聞』、各週刊誌から何度も取材を受けているが、中国メディアからの取材は弊誌が初めとのことであった。

 

痛みも恥辱感も無い

―― 痔は慢性疾患の一つで患部が特別であるため、多くの患者は口に出せず病院からも遠のきがちです。ところが、貴診療所は大変な賑わいで、東北や九州からも多くの患者が訪れています。他の病院との違いは何ですか。なぜこんなに人気があるのですか。

岩垂 私は肛門疾患医療に40年間携わってきました。昔は日本の肛門科の診療所は個人の医院によるもので、医療技術も親から子へ伝える一子相伝の秘伝のようなものでした。医科大学にも肛門の講座は無く、私の恩師の隈越幸男先生が欧米の医療技術を導入し公的な総合病院の中に日本初の肛門専門の大腸肛門病センターを創設したことで、制約や限界のあった日本の肛門医療に風穴が空きました。

私は隈越幸男先生が開設された大腸肛門病センターで30数年働き、センター長も務めました。その頃は外来で一日に150人から200人の患者様を診察しました。

しかし多数の患者さまを平等に診察しようとすると患者様お一人お一人に費やせる時間は1分ほどで診察や、その結果の説明の時間は明らかに足りませんでした。

また手術も限られた時間内に多くの方を手術しなければならないために、なるべく無駄を省き効率を重視する、オートメーション化した工場の生産ラインのようになっていました。そのため、一人一人の患者さまと、しっかりと対応できる医療をと考え、試行錯誤の後、9年前に自分の名前を冠した「岩垂純一診療所」を開設しました。

痔は厄介で恥辱感を伴う疾患です。30年の経験から、患者様は男性だけではなく女性にも多いことがわかりました。女性は妊娠・出産により痔を発症しやすくなります。これまでずっと痔の手術は恥辱感と痛みを伴い、多くの女性は耐え忍ぶしかありませんでした。ところが、当診療所ではハイレベルで安全性の高い手術によって、嫌な思いや恥辱感、痛みも感じることなく治療を終えることができ、なおかつ人知れず治すことが可能です。

診療所の開設に当たっては、患者様の心情とニーズを十分に考慮し、癒やされる空間をと壁の色は診療所にありがちな白やピンクではなくベージュに、照明は間接照明にしました。また、立地も銀座であるため、どう見ても痔の専門クリニックには見えません。そして予約制のため、患者様の来院時間が重なることは少なく、すぐに診察室に入ることができます。

最近、90過ぎの女性の患者様で、人に知られたくなくて長年我慢してきたが、最後は、きれいな体になりたくて来ましたという方が続いて受診されました。

肛門の診察と言うと、皆さんは恥ずかしい姿勢で下半身をすべて露出するのかと心配されますが、ここでは横向きに寝て露出も、わずか一部分だけです。肛門には麻酔の潤滑剤を塗り、できる限り患者様に痛みや不快感を与えないように診察します。診察した結果も診察した部屋と別室で患者様と一対一で十分に病状の説明をします。一般の病院では単に医師の説明を受けるだけですが、ここでは、肛門を診察したビデオで病変部を眼で確認しながら、なおかつ、図を描きながら説明をうけることができます。

 

三時間で長年の苦痛を取り除く

―― 貴診療所では日帰り手術を実現し、患者の人には言えない悩みを解決されています。女性の患者は、家族に銀座に買い物に行くと言って、ここで手術を受けられます。手術の具体的なプロセスはどういうものですか。

岩垂 痔の根治には手術が必要です。一般の病院では手術する医師が腰椎麻酔をした上で手術を行います。腰椎麻酔だと下半身に感覚がなくなるため、術後、しばらくは正常な歩行や排せつが困難になり、また、たまに頭痛を生じることがするため、短くても2~3日の入院が必要になります。

当診療所には経験豊富な麻酔の専門医が手術中ずっと1対1で付き添い100パーセント安全を確保しています。副作用や後遺症の心配もありません。金曜日を手術日としていますが、患者様には来院してすぐに手術着に着替えていただき、点滴をして、点滴から麻酔します。麻酔が効いて完全に寝てしまってから手術が始まり、麻酔から覚めると手術は終わっています。手術する日に診療所にいる時間はトータルで3時間ほどです。その間、患者様は恥辱感も不快感も感じることはありません。

 

最高の医療に国境はない

―― 国が豊かになるにつれ中国人の健康志向も強まり、医療ツーリズムが新たなトレンドになりつつあります。中国では「10人中9人が痔を患っている」と言われていますが、貴診療所では中国人患者を受け入れますか。手術には何日必要でしょうか。

岩垂 肛門の手術自体は何ら複雑なものではありません。ここでは金曜日に手術をし、術後は帰宅していただき、翌土曜日の朝9時に手術創の手当に来ていただきます。創の手当が済めば入浴できますし、散歩や外出も可能です。

北海道や九州からも多くの患者様が来院されます。東京までの所要時間は上海や北京と変わりません。通常、金曜日に来院して手術を受け、ホテルに一泊して土曜日の朝に創の手当を行い、日曜日は一日休息をとって、月曜日に再検査を行い、火曜日から仕事に復帰できます。手術創の縫合には体内で溶ける糸を使用しています。糸が溶けるのに1週間から10日かかります。ですから、糸が溶けた後に一回は創のチェックが必要となります。その後は1ヶ月後と間隔が長くなります。

手術自体は30分ほどで終わり、速くて安全です。しかし、肛門は便の出口ですので、日々の排便の際に安静を保てず、また菌に感染し化膿しやすいと言えます。ですから術後の管理が大事なのです。

中国の患者様でしたら、日本に2週間ほど滞在していただき、手術の翌日の午後には観光に出掛けられます。1週間後の検査で問題がなければ、さらに1週間遊んで、最後は搭乗前に検査に来ていただければ安心して帰国できます。

私は中国語が話せませんので、通訳の方を伴っていただかなくてはなりません。肛門疾患に悩む、より多くの患者様を救ってあげたいと思いますし、医師にとって、苦悩を解決し最高の医療を提供するのに国境は関係ありません。

 

日本人の特性は模倣しグレードアップさせること

―― 中国や欧米諸国と比較して、日本の医療の特性と優れた点は何ですか。

岩垂 歴史的に見て、中国は日本医学の師です。日本は中国から多くの医学理論や技術を学んできました。漢方医学は今では日本の医学の重要な体系の一つになっています。

明代の著名な外科医・陳実功の著作『外科正宗』には、肛門疾患の記述があります。それまで肛門疾患は内科治療の領域とされていましたが、陳実功が初めて外科治療を施しました。肛門診療における陳実功の治療法を日本は学びました。一方、江戸時代、オランダの医師が長崎の出島に西洋の医学、オランダ医学を持ち込みました。そして1800年代から日本では華岡清洲によってオランダ医学と漢方医学を融合した治療法が行われるようになりました。明治維新以降はドイツ医学を熱心に学び始め、それは第二次世界大戦が終わるまで続き、その後はイギリスとアメリカの医学を学ぶようになりました。このように日本の医学の歴史を遡ると、中国医学が日本の医学や日本の肛門疾患治療の基礎になっているのです。

今日でも日本が中国の肛門疾患治療から学ぶことはたくさんあります。例えば2005年からは中医研究院広安門医院の名医である史兆岐教授が開発した注射療法である「消痔霊」を改良して商品化し使用しています。

以上のように日本は海外から様々な医学を学んできましたが、日本人の特性として、第一に模倣に長けていることが挙げられます。そして、ただ単に模倣するだけではなく、さらにグレードアップさせ、最高のものを作り出す事に長けています。痔の治療においても同様です。東洋と西洋の医療技術の良いところを融合した上で日本人の特性を発揮し、より安全でよりスピーディでよりきめ細やかな治療法を確立しています。

 

取材後記

取材を終えて、恒例の揮毫をお願いすると、岩垂純一氏は「誠心誠意」と記して下さった。「誠心誠意」だからこそ、弛まず向上を続け、患者に安心で心地よい環境と、これまでになくスピーディできめ細やかな治療ができるのだろう。

情報元:人民日報海外版日本月刊